寺井家「能管・笛筒」名鑑
1989(平成元)年12月~1990(平成2)年2月に渡って行われた、特別展示『寺井家所有能管・笛筒展』(会場、東京千駄ヶ谷・国立能楽堂展示室)に出品された物を中心に、寺井家所有の能管(銘管・古管)・笛筒の中から代表的なものを収録しました。
銘「大獅子」

オオジシ
江戸時代初期/宜竹・作
頭:純金左横向獅子 (後藤祐乗・作)
明和年間(約230年前)の徳川将軍家に差し出された「書上ゲ」に藤堂家所有と有りますが、のち一噌家に贈られたものと思われます。
この時の「書上ゲ(注1)」には銘管70種の名が有りますが、現在伝えられる物は十数種のみです。
元禄7年、一噌流四代家元宗光の時に、筑前黒田家に預けられ、のち当家に伝わりました。
節の所に虫喰いがあり、歌口の所より折れた跡があります。
※注1 「書上ゲ」とは、笛方各家や各大名家に伝う笛の所有を記し、将軍家に差出された笛の目録のことです。
注2 「歌口」とは、息を入れる穴のことです。
銘「瀧止」

タキドメ
江戸時代/獅子田・作
頭:五三ノ桐
明和年間の「書上ゲ」に春日流笛家元春日市右衛門所有とあり、のち当家に伝わりました。
音色大きく滝の音をも消すと伝えられ、それが銘(注1)の由来となっています。
※注1 「銘」とは、笛の名前の事です。無銘の笛というのは、名前が付いていない笛をさします。
銘「青葉」

アオバ
江戸時代初期/獅子田了竹・作
頭:母衣武者騎馬乗図
現在、寺井義明が舞台にて使用
明和年間の「書上ゲ」に水戸家所有とあります。
直径約ニセンチ弱の小さい頭の中に、馬に乗った鎧甲姿の武者が右手に扇、左に弓を待ち背中には母衣を背負った姿が写し出されています。
銘「一聲」

イッセイ
江戸時代初期/宜竹・作
頭:一聲ノ金文字
現在、十世「寺井久八郎」が舞台にて使用
姿の大変美しい笛で、一噌家所有の銘管『翁』と双壁です。
現在玄人に使用されている笛の中で内径が一番太く、息と力のいる能管です。
歌口及びニッ目と三ッ目の間に折れ傷があります。
銘「獅王」

シシオウ
江戸時代初期/桜田・作
頭:純金右横向獅子
現在、寺井宏明が舞台にて使用
青葉の笛と一対の箱に入って当家に伝わりました。
寛政9年2月大修理の記録の記載が箱書に有り、笛師「竹禄斎」加工修理と記して有ります。
銘「初蝉」
無銘-1
無銘-2
黒地宝尽沈金蒔絵 笛筒

クロジタカラヅクシチンキンマキエ
長門管と伝えられている、大変貴重な笛筒です。
沈金蒔絵(注1)で、目出度い宝珠や亀、小槌などの図柄を、砂金を撒いて書いた河の周りに配してあります。いわゆる宝尽くしの蒔絵です。
※注1 「沈金蒔絵」とは、黒漆を塗った後に文様を毛彫りし、そのあとに漆を摺り込み金箔や金粉を付着させて金線の絵を描いてゆく手法のことです。
龍田川紅葉山水図高蒔絵笛筒

タツタガワモミジサンスイズタカマキエ
深山渓谷の谷あいの滝より出ずる水は、岩に砕け谷を下り紅葉を川面に浮かべ流れ行く、いわゆる「竜田川絵図」です。
岩に砕け散る水しぶきの一つ一つにプラチナを埋めるなど、贅をつくした笛筒です。
楓葉散高蒔絵 笛筒

カエデバチラシタカマキエ
全面に楓の葉を配し、その模様は葉の裏表を金銀で表し大変豪華な笛筒です。
筒の上部の周りの縁取りを銀細工でするなど贅沢な大名道具の一つです。
本来は春日家に伝う銘『凧』(こがらし)の笛の筒ではないかと思われます。
現在、寺井宏明が舞台にて使用しています。
森田千鳥白波図高蒔絵 笛筒

モリタチドリシラナミズタカマキエ
波高く波頭は白く砕け、その波間に飛び交う森田千鳥(注1)。
家元森田初太郎家に伝わり残りし只一つの品で、初太郎の孫、現森田家当主森田芳壽氏より寺井久八郎に贈られたものです。
戦災により高熱を受け色が変わったり潰れたりしていたのを修理復元し、十世寺井久八郎が舞台にて使用しています。
※注1 「森田千鳥」とは、鳥の羽根が尾までとどいており、その羽根より足がでている千鳥のことです。
丹頂鶴飛翔図高蒔絵 笛筒
菊紋模様散高蒔絵 笛筒
梨地菊蝶高蒔絵 笛筒

ナシジキクチョウタカマキエ
地に植えられたる菊は美しい花を付け、その周りを蝶が舞う。
銘管『大獅子』に筒無く黒田家にてはこの筒を当てていたといわれています。
製作年代は大変古く江戸時代初期のものではないかとおもわれます。
螺鈿根引松模様 笛筒
山草図蒔絵 笛筒

サンソウズマキエ
タンポポやゼンマイなどの、野に咲き、野に育ちたる目出度い草花と言われるものを水辺に置き、葉の葉脈や花の穂先などにも文様を描くなど実に繊細な技術を駆使しています。
画かれた蒔絵の一つ一つを是非じっくりと見て頂きたいとおもう図柄です。
現在、寺井義明が舞台にて使用しています。












